多項係数
<div class="card"> <div class="card-body"> <h4 class="card-title">同じものを含む順列</h4> <h5 class="card-subtitle mb-2 text-muted">多項係数もしくは組み合わせの積に等しい</h5> <p class="card-text"> 同じものの個数 \(p_1, p_2, \cdots, p_m\) で表されるものをすべて並べる場合の数は多項係数を用いて以下のように表される。 \[ \dbinom{\sum_{i=1}^{m}p_i}{p_1,p_2,\cdots,p_m} \coloneqq \frac{(\sum_{i=1}^{m}p_i)!}{\prod_{i=1}^{m}p_i!} = \prod_{i=1}^{m}\dbinom{\sum_{j=i}^{m}p_j}{p_i} \] さらに、順列と組み合わせの記号に置き換えれば: \[ \frac{\permu{\sum_{i=1}^{m}p_i}{\sum_{i=1}^{m}p_i}}{\prod_{i=1}^{m}\permu{i}{i}} = \prod_{i=1}^{m}\combi{\sum_{j=i}^{m}p_j}{p_i} \] このままでは理解が難しいので、\(m=3\) として同じものの個数 \(p, q, r\) で表されるものをすべて並べる場合の数は以下の通りである。 \[ \dbinom{p+q+r}{p, q, r} \coloneqq \frac{(p+q+r)!}{p!q!r!} = \dbinom{p+q+r}{p}\cdot\dbinom{q+r}{q}\cdot\dbinom{r}{r} \] \[ \frac{\permu{p+q+r}{p+q+r}}{\permu{p}{p}\cdot\permu{q}{q}\cdot\permu{r}{r}} = \combi{p+q+r}{p}\cdot\combi{q+r}{q}\cdot\combi{r}{r} \] つまり、左辺は、分子「同じものを区別しない場合の順列の場合の数」を分母「重複度、つまり、同じものを並べた場合の順列の場合の数の総積」で割ることを意味している。一方で、右辺は、空いている並びの位置に同じものを割り当てる組み合わせの場合の数の総積を意味している。 </p> </div> </div> <p/> <h2>多項定理</h2> <p> これは以下のような展開となることを表す。 \[ \begin{aligned} \left(\sum_{i=1}^{m}x_i\right)^n &= \sum_{p_i\ge 0,\,\sum_{i=1}^{m}p_i=n}\left(\dbinom{n}{p_1,p_2,\cdots,p_m}\prod_{i=1}^{m}x_i^{p_i}\right)\\ &= \sum_{p_i\ge 0,\,\sum_{i=1}^{m}p_i=n}\left(\frac{n!}{\prod_{i=1}^{m}p_i!}\prod_{i=1}^{m}x_i^{p_i}\right)\\ &= \sum_{p_i\ge 0,\,\sum_{i=1}^{m}p_i=n}\left(\prod_{i=1}^{m}\dbinom{n}{p_i}\prod_{i=1}^{m}x_i^{p_i}\right)\\ \end{aligned} \] ちなみに、\(x_i=1\) のときは以下が成り立つ。 \[ m^n = \sum_{\sum_{i=1}^{m}p_i=n}\dbinom{n}{p_1,p_2,\cdots,p_m} \] このままでは理解が難しいので、\(m=2\) として添え字列 \(p, n-p\,(\ge 0)\) で表される多項定理は \(\binom{n}{p, n-p} = \binom{n}{p}\) より二項定理となり以下の通りである。 \[ \begin{aligned} (x + y)^n &= \sum_{p=0}^{n}\left(\dbinom{n}{p, n-p}x^py^q\right)\\ &= \sum_{p=0}^{n}\left(\frac{n!}{p!(n-p)!}x^py^q\right)\\ \end{aligned} \] ここで \(n=2\) とすれば以下の展開式を表すことになる。 \[\small (x + y)^2 = x^2 + 2xy + y^2 \] ここで \(n=3\) とすれば以下の展開式を表すことになる。 \[\small (x + y)^3 = x^3 + 3x^2y + 3xy^2 + y^3 \] やはり理解が難しいので、\(m=3\) として添え字列 \(p, q, r\,(\ge 0)\) で表される多項定理は以下の通りである。 \[ \begin{aligned} (x + y + z)^n &= \sum_{p+q+r=n}\left(\dbinom{n}{p, q, r}x^py^qz^r\right)\\ &= \sum_{p+q+r=n}\left(\frac{n!}{p!q!r!}x^py^qz^r\right)\\ &= \sum_{p+q+r=n}\left(\dbinom{n}{p}\cdot\dbinom{n-p}{q}\cdot\dbinom{r}{r}x^py^qz^r\right)\\ \end{aligned} \] ここで \(n=2\) とすれば以下の展開式を表すことになる。 \[\small (x + y + z)^2 = x^2 + 2xy + 2xz + y^2 + 2yz + z^2 \] ここで \(n=3\) とすれば以下の展開式を表すことになる。 \[\small (x + y + z)^3 = x^3 + 3x^2y + 3xy^2 + y^3 + 3x^2z + 6xyz + 3y^2z + 3xz^2 + 3yz^2 + z^3 \] 確かに、各係数が、 \[ \begin{aligned} p=3, q=0, r=0 &\Rightarrow \frac{3!}{3!0!0!}x^3y^0z^0 = \binom{3}{3}\binom{0}{0}x^3y^0z^0 = x^3\\ p=2, q=1, r=0 &\Rightarrow \frac{3!}{2!1!0!}x^2y^1z^0 = \binom{3}{2}\binom{2}{2}x^2y^1z^0 = 3x^2y\\ p=1, q=1, r=1 &\Rightarrow \frac{3!}{1!1!1!}x^1y^1z^1 = \binom{3}{1}\binom{2}{1}x^1y^1z^1 = 6xyz\\ \end{aligned} \] などとなっていることがわかる。上記、\(\dbinom{n}{p, q, r}\) や \(\dbinom{n}{p_1,p_2,\cdots,p_m}\) を多項係数と言い、二項係数を一般化したものである。 </p> <h2 style="page-break-before: always;">多項係数の問題</h2> <h5>\((x+2y+3z)^6\) の \(x^3y^2z\) の係数を求めよ</h5> <p> \((p, q ,r) = (3, 2, 1)\) のときの係数なので、 \[ \frac{6!}{3!2!1!}x^3(2y)^2(3z)^1 = 60\cdot 4\cdot 3\,x^3y^2z^1 = 720\,x^3y^2z \] ゆえに \(720\). </p> <h5>\((x+2xy+3)^6\) の \(x^5y^3\) の係数を求めよ</h5> <p> \((p, q, r) = (2, 3, 1)\) のときの係数なので、 \[ \frac{6!}{2!3!1!}(x^2)^2(2xy)^33^1 = 1440\,x^5y^3 \] ゆえに \(1440\). </p> <h5>\((x^2+2x+3)^6\) の \(x^4\) の係数を求めよ</h5> <p> \(2p + q = 4\) のとき、つまり、\((p, q, r) = \{(2, 0, 4), (1, 2, 3), (0, 4, 2)\}\) のときの係数の和なので、 \[ \frac{6!}{2!0!4!}(x^2)^2(2x)^03^4 + \frac{6!}{1!2!3!}(x^2)^1(2x)^23^3 + \frac{6!}{0!4!2!}(x^2)^0(2x)^43^2 = 9855\,x^4 \] ゆえに \(9855\). </p> <h2>ライプニッツの公式</h2> <p> これは \(f_i\) を \(x\) の関数として、その積の \(n\) 回微分が以下のような展開となることを表す。 \[ \begin{aligned} \left(\prod_{i=1}^{m}f_i\right)^{(n)} &= \sum_{p_i\ge 0,\,\sum_{i=1}^{m}p_i=n}\left(\dbinom{n}{p_1,p_2,\cdots,p_m}\prod_{i=1}^{m}f_i^{(p_i)}\right)\\ &= \sum_{p_i\ge 0,\,\sum_{i=1}^{m}p_i=n}\left(\frac{n!}{\prod_{i=1}^{m}p_i!}\prod_{i=1}^{m}f_i^{(p_i)}\right)\\ &= \sum_{p_i\ge 0,\,\sum_{i=1}^{m}p_i=n}\left(\prod_{i=1}^{m}\dbinom{n}{p_i}\prod_{i=1}^{m}f_i^{(p_i)}\right)\\ \end{aligned} \] このままでは理解が難しいので、\(m=2\) として添え字列 \(p, n-p\,(\ge 0)\) で表される多項定理は \(\binom{n}{p, n-p} = \binom{n}{p}\) より二項定理となり以下の通りである。 \[ \begin{aligned} (fg)^{(n)} &= \sum_{p=0}^{n}\left(\dbinom{n}{p}f^{(p)}g^{(n-p)}\right)\\ &= \sum_{p=0}^{n}\left(\frac{n!}{p!(n-p)!}f^{(p)}g^{(n-p)}\right)\\ \end{aligned} \] ここで \(n=1\) とすれば以下の展開式を表すことになる。 \[\small (fg)' = f'g + fg' \] ここで \(n=2\) とすれば以下の展開式を表すことになる。 \[\small (fg)'' = f''g + 2f'g' + fg' \] ここで \(n=3\) とすれば以下の展開式を表すことになる。 \[\small (fg)''' = f'''g + 3f''g' + 3f'g'' + fg''' \] やはり理解が難しいので、\(m=3\) として添え字列 \(p, q, r\,(\ge 0)\) で表される多項定理は以下の通りである。 \[ \begin{aligned} (fgh)^{(n)} &= \sum_{p+q+r=n}\left(\dbinom{n}{p, q, r}f^{(p)}g^{(q)}h^{(r)}\right)\\ &= \sum_{p+q+r=n}\left(\frac{n!}{p!q!r!}f^{(p)}g^{(q)}h^{(r)}\right)\\ &= \sum_{p+q+r=n}\left(\dbinom{n}{p}\cdot\dbinom{n-p}{q}\cdot\dbinom{r}{r}f^{(p)}g^{(q)}h^{(r)}\right)\\ \end{aligned} \] ここで \(n=1\) とすれば以下の展開式を表すことになる。 \[\small (fgh)' = f'gh + fg'h + fgh' \] ここで \(n=2\) とすれば以下の展開式を表すことになる。 \[ (fgh)'' = f''gh + 2f'g'h + 2f'gh' + fg''h + 2fg'h' + fgh'' \] ここで \(n=3\) とすれば以下の展開式を表すことになる。 \[ (fgh)''' = f'''gh + 3f''g'h + 3f''gh' + 3f'g''h + 6f'g'h' + 3f'gh'' + fg'''h + 3fg''h' + 3fg'h'' + fgh''' \] 確かに、各係数が、 \[ \begin{aligned} p=3, q=0, r=0 &\Rightarrow \frac{3!}{3!0!0!}f^{(3)}g^{(0)}h^{(0)} = \binom{3}{3}\binom{0}{0}f^{(3)}g^{(0)}h^{(0)} = f'''gh\\ p=2, q=1, r=0 &\Rightarrow \frac{3!}{2!1!0!}f^{(2)}g^{(1)}h^{(0)} = \binom{3}{2}\binom{2}{2}f^{(2)}g^{(1)}h^{(0)} = 3f''g'h\\ p=1, q=1, r=1 &\Rightarrow \frac{3!}{1!1!1!}f^{(1)}g^{(1)}h^{(1)} = \binom{3}{1}\binom{2}{1}f^{(1)}g^{(1)}h^{(1)} = 6f'g'h'\\ \end{aligned} \] などとなっていることがわかる。このように、ライプニッツの公式は基本的に多項定理と同じである。 </p>
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